民法には、賃貸借の規定があります。
これは、特定の財産価値のあるものを相手方に用益させることを約して、相手方がそれに対して賃料を支払うことを約した場合に成立する契約形態です。
動産、不動産が対象となります。
他方、民法には、消費貸借の規定があります。
こちらは、貸したものが消費されることを前提にして、それと同種同等のものを返すことを約することで成立します。
借りた金銭は、同じものを返還するわけではないので、消費貸借です。
ところで、株式などは現金化が簡単にできるので、一見消費貸借に似ていると考えられがちですが、借りた株式をそのまま返すことになることからも分かるように、賃貸借に向いている動産といえます。
そこで、株式などの有価証券は賃貸借契約の対象にすることが可能なのです。
株式などを賃貸借の対象にした場合、これを株券等貸借取引という言い方をしています。
また、有価証券貸借取引という言い方もあります。
これは、株式等の有価証券を賃貸借の対象とする取引形態です。
借り手が貸し手に賃借料を支払うことを約して、株式などの有価証券を借り受け、あらかじめ決められた期間経過後、同種同等の株式などを返還することを約することで成立する契約形態となります。
同種同等の株式であればよい点では、消費貸借の性格をも併有するとみてよいでしょう。
この契約形態は、実務上では証券会社や銀行などが借り手となって、貸し手から株式などを賃借する例があります。
その場合には、通常、基準価額で株式などを買い取る権利を付帯した特約がついています。