簿記の勘定科目の中に、通常の勘定科目とは異なった色合いを持つものがあります。
有価証券に関連したものとしては、差入有価証券、保管有価証券、預り有価証券で、このうち、差入有価証券とは、有価証券を担保にした場合に計上する勘定科目です。
逆に、他から担保として預かった有価証券が預り有価証券、そしてそれを保管するために作られた勘定科目が保管有価証券となっています。
これらの勘定科目に共通した性質は、いずれも所有権の移転を伴わないという点です。
会計上所有権を伴わない取引に関しては、帳簿に記載する義務はありません。
つまり、所有権を伴っていないものを資産として計上するのは、それほど意味があるものではないということです。
しかし、こうした有価証券の存在は、帳簿に何も記載がないと、どのような有価証券であったかを忘れやすい類の存在でもあります。
そこで、これらは備忘のための勘定科目として作成されました。
ただし現在は、金融商品会計制度の導入によって、従来の処理に変更が加えられています。
たとえば、差入有価証券の場合に、有価証券が担保として差し入れられた場合、従来は有価証券勘定から差入証券勘定に振替処理をするか、注記処理をするか選択ができるようになっていましたが、これが上記の会計制度の導入によって注記処理に一本化されます。
一方、他から有価証券を担保として受け入れる場合には、差入証券は時価を注記するようになっています。